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メキシコペソ10年下落の要因

メキシコペソが下落を続けた理由【暴落要因】

この数年、メキシコの通貨ペソは何度かの暴落を経験した通貨の一つでした。正確には2013年から2016年の期間です。大きな要因は、コモデティ価格の下落主要国の金融緩和策による資本流出です。メキシコペソを始め、多くの新興国通貨が売られました。

以下にはデータを使ってメキシコペソが暴落した理由について考察を行いたいと思います。

  1. メキシコペソの為替レート推移
  2. 原油・銅価格の下落で輸出に打撃
  3. 先進国の金融緩和で資本流出
  4. 米国利上げとメキシコペソのこれから

メキシコペソの為替レート推移

最初にメキシコペソの値動きを見ていきましょう。以下はメキシコペソのFXレートをドル基準で見たものです。分かりやすいように[1ペソ=XXドル]の形式で表示しています。

メキシコペソドルの為替レート推移

ご覧の通り、リーマンショックの前後でメキシコペソの為替レートは半額にまで落ち込みました。感覚的にはリーマンショックの影響がじわじわ効いた状況が思い浮かびます。

具体的なリーマンショックの影響は、消費減退と投資抑制であると言って良いでしょう。そこから転じて、それぞれ商品価格の下落と新興国からの資本流出という事態を起こしました。今回は、そのメカニズムをデータを交えて解説しようと思います。

原油・銅価格の下落で輸出に打撃

商品価格の下落は新興国において、大きな意味を持ちますというのも、多くの新興国は消費者サイドではなく、商品を輸出する提供者サイドであるためです。特に、ここで言う商品=コモデティというのは、鉄とかコーヒー豆とか小豆といった、一次産業的な商品のことを指します。大体にして、新興国では、これらの商品が主要輸出品目です。

ところが、リーマンショック以降は商品価格の値下がりが続いています。例えば銅です。メキシコは銅の産地で有名ですが、頼みの銅価格は大きく下落を続けています。これは、リーマンショック後に世界的デフレが続き、材料需要が減ったことが原因でしょう。

銅価格の推移と下落要因の分析

同じく下落を続けているのが、原油価格です。本来的にはエネルギーは恒常的に消費される商品です。ところがアメリカがシェールガス革命を起こして供給過多となりました。

原油価格の推移

原油はメキシコの輸出品目第3位の商品です。原油価格の下落がメキシコの貿易収支に打撃を与えたことは言うまでもありません。

先進国の金融緩和で資本流出

先進国の経済的な取り組みも新興国にマイナスの影響を与えました。金融緩和による株高です。グローバルマネーは新興国への投資から引き上げられ、先進国の金融商品に向かいました

本来的に新興国はリスクの高い投資先に分類されます。それでも従来はリスクを取ってメキシコペソ等の金利通貨を買う投資が行われていました。金利の高い通貨を買って、金利の安い通貨を売る=キャリートレードの流行があったのです。

ところが、金融緩和策によって金余りの状況が発生したことで、先進国の金融商品の高騰が期待できるようになりました。最初は国債、次は株と、先進国の金融商品に資本が向かっていったのです。日本で言えばアベノミクス、アメリカではNASDAQの高騰を巻き起こしました。

煽りを食ったのが新興国です。投資先としてリスクの高いことが懸念され、先進国に投資マネーを奪われてしまいました。メキシコでは実需的な投資(自動車工場の建設など)こそあるものの、投機的な取り組みは徐々に減退していったのです。

米国利上げとメキシコペソのこれから

では、今後もメキシコペソの下落は続くのかというと、それはちょっと考え辛いところです。確かに米国のトランプ政権による風当たりの強さや、恒常的な原油価格の低迷と言ったマイナス要因はあります。ただ、それらは全て現在の為替レートに織り込まれているものです。

むしろ、ここからはアメリカが守りに入る局面です。そう、金融緩和策の終了です。2016年から米FRBは緊縮策に舵を切り、利上げによる金融引き締めを開始しました。異次元金融緩和などは既に過去の話となり、現在の話題は、いかに慎重に利上げを行うか?という守りの戦略です。

こうした状況でも、米国株は緩やかに上昇を続けはするでしょう。ただ、それは米国の好景気と商品需要の増加を意味します。実際、それを示すかのように銅価格は回復の兆しを見せています。

銅価格の推移と下落要因の分析

そして、先進国の緩やかな株高ではリターンに納得できない投資家がいる訳です。特に高利益を期待されるヘッジファンドが代表格です。そんなハイリターン派の投資家達が既に新興国に目を付けています。ここら辺の事情は、英FinancialTimes当たりを読むと分かります。

そんな訳で、金融緩和の終了によるキャリートレードの復興。これがメキシコペソ暴落の後にくるシナリオなんじゃないかと考える次第です。

参考:メキシコペソの高金利を活かすトレード手法

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