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メキシコの財政収支今後の予想

メキシコ経済の経常収支と財政収支

前回の記事では、メキシコの経常収支が赤字である点を指摘しました。その原因はマイナスの財政収支です。経常収支と財政収支が共にマイナスで、いわゆる双子の赤字状態になっている訳です。

では、財政収支をマイナスとさせる原因はなんなのでしょうか。今後の見通しと併せて解説していきます。

  1. メキシコ財政赤字の状況
  2. 経常収支の今後~IMF予想
  3. メキシコ経済に期待されること

メキシコ財政赤字の状況

前回の記事では、メキシコの経常収支が20億ドルほどの赤字であることを説明しました。主な理由は資源価格の低迷です。メキシコは原油や銅といった天然資源の輸出を外貨獲得の手段としています。そのため、資源価格が低迷すると貿易収支・財政収支が赤字になりやすい国です。

結果、そのまま国家全体の財政(=経常収支)を圧迫する状況を招きます。以下のチャートでは、経常収支と財政収支を重ねて表示してみました。財政収支の金額が一桁違うことを実感して頂けると思います。

メキシコ財政収支・経常収支の推移

では、このような財政赤字をどのようにして埋めているのか。答えは、国債の発行です。国債を売ることで(表面上は)収入を得て、マイナスの財政収支を補填しているのです。当然ながら、そうした財政状況は不健全であり、機関投資家・アナリストからは不評を買っています。

もっとも、個人投資家の目線で見ると少し様子は異なります。こうした双子の赤字はメキシコに限らず、アメリカでも同様の状況にあります。そんな事情と利回りの魅力を考えれば、リスクを追っても良い投資先であるのかも知れません。

経常収支の今後~IMF予想

実はメキシコ経常収支の予想情報もマーケットには流れています。IMF国際通貨基金の市場レポートです。メキシコは元より、トルコや南アフリカなどの新興国全般に渡って、将来的な財政状況の見通しを公にしています。

そこで、先ほどのデータに将来予想を加えたチャートを作ってみました。以下をご覧ください。

メキシコ財政収支と経常収支(IMF予想)

結果は残念。今後も財政赤字の改善する見通しは立ってはいない様子です。

財政赤字の原因も、実は多岐に渡ります。冒頭に書いた資源価格の下落はその一つ。他に出稼ぎ労働者の仕送りの目減りや、為替レートの悪化による外貨建て債権の利払い増加といった要因もあります。IMFのレポートはそうした要因を考慮しているらしく、今後も要因変化がなければ継続するとの見通しなのでしょう。

メキシコ経済に期待されること

では、メキシコ経済や牽いてはメキシコペソの将来は絶望的なのでしょうか。メキシコの経常収支はともかく、メキシコペソやメキシコ株に関してはそうでもありません。なぜなら、IMFの将来予想は既に為替レートに織り込まれているためです。言い方を変えれば、メキシコ経済になんらかの努力や変化があれば将来予想も覆るということです。

具体的には、自動車産業の拡大・成長が当面の課題でしょうか。リーマンショック後は、資源価格の輸出黒字や出稼ぎ者の送金額が減った一方で、自動車部品の輸出黒字だけは稼ぎを続けていました。ただ現状では、アメリカへの輸出はトランプ政権の圧力が強く、またアメリカの景気動向に依存しています。輸出先や販路の拡大といった施策が期待されます。

また、新興国全般に言えることですが、組立部品というものは利益率があまりよろしくありません。自動車産業は典型的な組立産業です。自動車ばかりに依存していると、財政収支の回復は難しいのではないでしょうか。他の産業の呼び込みもメキシコ政府には期待される所です。

何はともあれ、メキシコペソは経常赤字を織り込み済み。ここいらが仕込みの時期ではないでしょうか。

参考記事:メキシコペソの高金利を活かすトレード手法

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