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オブラドル新政権は現実路線に転換へ

メキシコ新政権と政策方針まとめ【現実路線へ転換】

7月の選挙で勝利したオブラドル次期大統領が12月に就任します。今回は、新政権の主要政策とその経緯について解説したいと思います。

注目される主な政策は3つ。メキシコという国家の成長政策とエネルギー改革、そして関係諸国との対外政策です。就任の時期が近付くに連れ、段々と現実路線への転換を否応なくされてきました。もっとも、国外から見た投資家の立場からすれば、同氏には多少大人しくしてもらった方が運用が容易になるのかも知れません。ネガティブサプライズが少なくなるためです。

選挙戦では、その過激な発言でポピュリストの異名をとったアンドレス=マヌエル=ロペス=オブラドル次期大統領。54%という圧倒的支持率で勝利するも、財政立て直しという喫緊の課題が同氏の前に立ちはだかったことが予想されます。

今回は選挙中の公約と絡めて、事の次第を解説していきたいと思います。

12月の就任に向けて現実路線への転換へ

冒頭に示した通り、オブラドル次期大統領が12月に就任します。ただし、7月の大統領選当初のような過激な発言は段々と鳴りを潜めてきています。

選挙というもは、どうしても支持率獲得のために国民の人気を得る必要があるものです。ただし、得てして勝利後は現実問題と向き合う必要が出るものです。オブラドル次期大統領にもその傾向が当てはまります。ポピュリズムから現実路線への転換です。

経済界と“手打ち” ロイター

 大統領選での勝利を決めたロペスオブラドール氏が最初に着手したのが、経済界との“手打ち”だった。

AP通信などによると、企業家調整評議会(CCE)のフアン・パブロ・カスタニョン会長、全国工業会議所連合会(CONCAMIN)のフランシスコ・セルバンテス・ディアス会長と相次いで会談。財政規律を厳守し、投資環境を尊重することを約束する一方、若者の就労拡大のための政策で互いに協力することに合意した。

選挙中は、大規模な改革案を公約に掲げ、エリート層からの支配脱却を声高に叫んでいました。そのため、経済界とは対立するとの見方が優勢でした。そこに出てきたのが上記のニュースです。就任直後に企業家達と懇談し、協調路線を打ち出しています。

上記のニュースに代表されるように、オブラドル氏のポピュリズムは影を潜め、就任直後の現在に至ってはかなりの現実路線に落ち着いてきました。今回は、こうした経済政策の転換事例を交え、就任後に取るであろう政策の見通しを付けていきたいと思います。

オブラドル次期大統領の公約と現実と

今回ご紹介する目玉の政策は主に3つです。成長政策、エネルギー問題、そして外交問題です。ざっくり結論だけを書くと以下の通りとなります。

  • 成長政策に伴うバラマキ懸念は後退⇒緊縮財政にプラス
  • エネルギー問題ではアメリカからの対外依存脱出を図る
  • 外交面ではアメリカとの対立を回避

具体的にはどういったことでしょうか。ひとつひとつ見ていきましょう。

目玉の成長政策は現実路線へ

オブラドル次期大統領の就任に当たり、経済的に最も懸念されたことは金融緩和策を取るでした。同氏はメキシコの経済成長に対し【年4%以上】の目標を掲げ、積極的に取り組む姿勢を見せていました。このため、企業優遇の緩和策を取るとの見方が出てていたのです。

しかしながら、この緩和策に釘を刺すかのようにメキシコ中銀が政策金利を引き上げました。成長路線に対してノーを突き付けたのです。長引くインフレに悩むメキシコ経済にとって、物価指数の安定の方が重要事項だと結論付けたのでしょう。中銀の独立性が担保されている以上、金融緩和による成長策は非現実的な選択肢となりました。

この利上げに対するアクションはまだありません。ただ、経済成長には資金が必要です。同氏が「増税はしない」と発言している以上、別の財源が必要になりますがその目途はありません。結果として、成長戦略は市場のルール整備や財源振り分けに終始し、国家の大規模な介入は難しくなるのではないかと予想されます。

エネルギー政策では対外依存脱却へ

オブラドル新政権の主要政策の中で、最も大きなトピックスがエネルギー問題でしょう。メキシコという国は産油国でありながら、アメリカからガソリンを輸入するという矛盾した状況に置かれています。精製所がないのです。精製所がないが故に、メキシコは算出した原油を米国に輸入し、そして精製されたガソリンを輸入するという対外依存の関係を取っています。

オブラドル新政権では、このエネルギーの対外依存を脱却することを目標に掲げています。当然ながら、具体的な政策は製油所の新設です。既に1.8兆円の投資を行うことが決定されていて、かつ米国への原油輸出量を削減する方針が固められています。

もっとも、この政策にも困難が付きまとっています。汚職問題です。特に外国企業の入札に対して新政権は神経質になっていて、一時はクリーンな国内企業のみで入札するとの報道もなされました。ただ、その方針も現実路線へ転換しつつあり、慎重ながらも受け入れの姿勢を見せるようになりました。

外交面ではアメリカとの対立を回避

選挙当初のオブラドル候補を知っている人からすれば、不思議な状況がひとつあります。いまだにトランプ大統領との衝突が報じられていないことです。それもそのはず。オブラドル次期大統領は全ての面でトランプ大統領との対立を回避しています。選挙当初に叫ばれたアンチ・アメリカの声高なトーンはウソのように静まり返っています。

背景の一つとして、米国からの挑発がない点が挙げられます。やはり経済的な面で強い結びつきを維持したいという思惑があるのでしょう。米国は中国との貿易摩擦を引き起こしている一方で、メキシコとのNAFTA再交渉は比較的穏やかに妥結しました。また、名指しでオブラドル大統領を批判する場面もありませんでした。トランプ大統領が喧嘩腰ではないのです。

一方のメキシコにとっても、自国の問題が山積みです。先に示したエネルギー問題も然り、汚職問題も然りです。自国の問題解決に集中したい次期政権としても、不要な争いは避けて通りたいことでしょう。選挙中には過激な発言で知られたオブラドル次期大統領ですが、意外と内向きな政策に集中しそうな様子が伺われます。

投資家にとっての新政権

以上の通り、今回はオブラドル新政権発足に当たり、その公約が現実路線に転換していく様を解説してみました。選挙終了後の経済政策に期待してメキシコペソを買った方は少しがっかりしたかも知れません。

ただ、投資家にとっては左派強硬派と呼ばれるオブラドル次期大統領が、大人しく政権を運営してくれる方が好ましいのかも知れません。同氏の掲げる【成長率4%】が実現すれば御の字ですし、下手に経済を刺激してインフレ率を上げてもらっても困ります。何しろ、今の新興国経済のテーマは【破綻しないこと】であって経済成長ではないからです。

新興国諸外国を見ると、トルコやアルゼンチンなど薄氷を踏む思いで投資しなければならない国が多くあります。その中でメキシコは経済規模も大きく、まだまだ安定感のある国です。中央銀行も通貨レートの安定に働きかけていて、先日も0.25bpの利上げを実施しました。長期で運用するには良い通貨なのではないかと思います。

そのような訳で、当サイトではメキシコペソの長期運用や積み立ての方法も解説しています。興味のある方は、関連記事もご覧ください。

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