メキシコペソは2018年に入ってから戻りを試したものの、現在は下落のトレンドを試しています。理由は3つ。一つは大統領選挙を控え、市場が買い控えをしている状況であることです。現在は左派候補者が支持率トップを維持し、当選の可能性が高まっています。
2つ目の理由はアメリカとのNFATA交渉が難航していることです。既に交渉期限が切れ、現在は期限延長を約束しているものの、先行きは不透明です。3つ目の理由は、メキシコ中銀が年初の利上げ以降、政策金利を据え置いていることでしょう。
今回は、こうしたメキシコを取り巻く経済環境にスポットを当てながら、2018年上半期の出来事を振り返ってみたいと思います。
- 大統領選挙では左派が支持増やす
- NAFTA交渉の期限切れで先行き不透明
- 政策金利は据え置きも利上げの余地あり
- 目先は選挙リスクも新政権への期待あり
大統領選挙では左派が支持増やす
メキシコペソの下落を促す一番のファンダメンタルズがこちらの選挙リスクです。メキシコでは7月に大統領選挙が行われます。その選挙に対する不安から、市場ではメキシコ資産への買い控えが起こっている状況であると考えます。
特に選挙の状況として、左派候補者のアントニオ・マニュエル・ロペス・オブラドル氏が支持率を伸ばしている背景があります。AMLOの相性で呼ばれ、国民からの支持は厚いのですが、いかんせん左派=改革派であるため当選後の政策が見通し辛い難点があります。市場の投資家からは改革リスクを恐れて、投資を手控えるとの声が挙がっています。
選挙の状況として、ほぼほぼ同氏の当選は確実視されています。各候補者の支持率は上記の通り。世論調査では、左派候補者が圧倒的1位の支持率を獲得しています。
現在では、メキシコペソの水準も随分と下がり、左派勝利のシナリオは織り込まれつつあります。ただ、値動きの大きい新興国通貨ですので、選挙前後にはまだレートが大きく動く可能性を秘めている状況であるとも考えます。
NAFTA交渉の期限切れで先行き不透明
2つ目の課題がNAFTA交渉の不透明感です。既に5月の時点で交渉期限を迎え、現在は期限延長の仮約束の元に交渉団が話し合いを続けている状況です。これはカナダも同様で、メキシコ・カナダの交渉団を相手にアメリカが無理難題を突き付けているという構図になります。
メキシコにとって、アメリカは最大の貿易相手国ですから、交渉がこじれればペソは売られます。特に先日、アメリカ側からアルミ・鉄鋼に対して関税が掛けられたことは、市場に「強硬策に出た」とのインパクトを与えました。当然ながら、メキシコペソの売りが加速した結果となっています。現在のメキシコペソは、この売りを受けて下落トレンドにあります。
アメリカサイドの背景には、トランプ大統領の中間選挙が年明けに控えていることがあるのでしょう。中間選挙で支持率を伸ばせなければ政府がレームダックになるとの観測は、トランプ政権誕生の頃から市場に出ています。アメリカ側も政府方針に従って成果を出すべく、容易には交渉に妥結しないことが想定されます。
結果として、市場は交渉が破綻するリスクを嫌い、メキシコペソの売りが少しずつ進んでいる状況です。
政策金利は据え置きも利上げの余地あり
ここまではマイナスのニュースばかりでしたが、通貨ペソにとってはプラスのニュースもあります。中銀の金融政策が引き締め策に転換していることです。
メキシコ中銀は2017年に総裁が交代するまで緩和策を実施していました。しかし、新総裁のアレハンドロ・ディアス・デレオン氏は金融引き締め策を明言。実際、総裁就任後の最初の会合で、政策金利の利上げを実施しました。有言実行でメキシコは金融引き締め策に転じた訳です。
一般に先進国では金融緩和がもてはやされますが、メキシコのような新興国ではインフレ抑制のために引き締め策が有効になるケースが多々あります。実際の状況として、メキシコは米国の金融緩和の影響や銅価格の下落を背景にインフレが加速した状態です。それゆえ、デレオン氏の引き締め策は有効な決定であると言えます。
問題があるとすれば、最後の利上げ以降は半年ほど金利が据え置かれていることです。市場参加者としては、いわば「利上げ待ち」の状況にあり、やはり積極的な買いが控えられている状態です。
目先は選挙リスクも新政権への期待あり
以上の通り、メキシコを取り巻く政治・経済環境をポイントごとにまとめてみました。ここからは、少し将来の話に移ります。大統領選挙が終わった後のお話です。
まず、一般に国の新政権が生まれると市場参加者は買いを入れる傾向があります。理由は題意の通りで、新政権への期待が掛かるからです。その期待は非常に大きなもので、どんなに嫌忌されていた候補者であっても、それまでの空気を一変させるほどの変化が市場にもたらされます。トランプ大統領の誕生前後が典型的な例でしょう。
当然ながら、メキシコにも同様のことが言えます。特に、NAFTA交渉のこじれも、金利が据え置かれている背景にも、メキシコのリーダー不在の状況が強く影響している状況があります。この停滞した国家政策を強く導くリーダーが誕生するとなれば、それは格好の買いの材料になるのではないでしょうか。
上記は管理人が年初に公表したメキシコペソの年間予想です。ここまでの傾向は予想通り。今後の予想は果たしてどうなることでしょうか。非常に期待して待っています。
※本記事は管理人の個人的憶測を一部交える文章です。FXは自己責任です。投資判断は自己の判断で行ってください。
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